刻限アンサンブル[9]

「あーもぅっ、人が増えても数が多過ぎるっ!!」
 シルマリルの声が響いた。








Vol.9
Since it is a very easy reason








 先程、シロフォン救助隊のデュレス・リールー・カーディナルが合流したので戦力が大幅に増えたものの、モンスターの増殖が止まる気配が全く無かった。

 シルマリルの目の前に居たレムレスを倒したのも束の間、待ってましたと言わんばかりに今度はフランカーパイレーツが飛び出して来た。

「シルマ、余所見してるヒマ無いよ!集中するんだ!」
と、カーディナルの檄が飛ぶ。

「集中力が欠けて来ましたか・・・・・・」

 ティーエルは小さく呟きながら、前方のトセットを見た。


 ラタフィアが持っている鉱石がモンスター召還装置と成っている。
 鉱石を奪い取るか、ラタフィアに停めさせるかの2択。
 後者は有り得ないと判断して、鉱石を奪取しようと接近戦に挑もうとするが、リーチや体格差の有るロボ相手では思う様に事が進まない。

(方法は一つだけ・・・)

 妙案が浮かんでいたのだが、それを行使する事は博打より難しい試み。
 しかし、迷いは無かった。


「・・・光ト闇ノ二重奏。其ノ名前ハ――――――」


 何事かを呟いた瞬間、神々しく白い光を放つ聖槍が、ダークストーカーを象徴するかの様な紫黒色の光を発した。



「ダークネス・オブ・ナイト!!!」



 槍から繰り出された闇の斬撃が、ロボのボディを斬り付けた。



 握った聖槍が折れてしまいそう。
 力の放出で、腕が破裂してしまいそう。
 足元が崩れて行きそう。
 身体全体から血が噴き出しそう。
 
 

「きゃあっ!!・・・うそ、動かない・・・・・・!?制御が・・・・・・」
 ロボに乗ったままのラタフィアは、操作させようと操作盤を動かすが、ロボは微動にしか動かなかった。
 焦るラタフィアの目に入って来たのは、槍を正面に構えて闇のオーラを纏ったトセットの姿。

「あ・・・・・・」




 正面から突きを受け、自分は敗北したと確信した。

 周囲の全ての音が聞こえなくなる錯覚に陥った。
 是も、ダークストーカーの成せる事なのだろうか。
 手にした鉱石が、音も無く砕け散っていた。
 意識を失う前に聞こえたのは、透き通った静かな声。



「――――――堕ちなさい」









「モンスターの増殖が・・・・・・止まった?」
「もう一踏ん張りですよ!!」
 ティーエルが既に何度目か判らないホーリーフェザーを放った。


「お、終わったぁ~・・・・・・つ、疲れた・・・・・・」
 シルマリルが床に寝転びながら疲弊した様子を見せる。

 ラタフィアの乗っていたロボが完全に沈黙していたが、その近くにトセットが倒れていた。
「トセちゃん!・・・・・・しっかり・・・・・・」
「トセッ・・・・・・」

 両目は固く閉ざされ、半開きになった口からダラダラと血が流れ出ており、倒れていた床にはトセットの腕から流れ出た紅い血が滲んでいる。
 
「ティーエル、早くヒーリングして!!」
「・・・・・・ヒーリング!」

 しかし、トセットはピクリとも動かない。

「・・・何で治らないの?ヒーリング足りないんじゃ無いの!?」

 トセットの様子を見て、シロフォンがティーエルに怒鳴り付けた。

「どうなってるの?もしかして、アレスとか?」
「まさか、いや・・・もしかして・・・・・・リザレクション!!」

 ヒーリングよりも更に強く、温かい光で包まれた。


「・・・・・・ぁ・・・私・・・・・・?」

 ゆっくりと、閉じられた色違いの両目を開いた。
 トセットの視界に、シロフォン・リールー・カーディナル・デュレス・シルマリル・ティーエルが見えた。

「よ・・・良かったぁ~」
 ペタリと座り込んで脱力しながら安心した様子を見せたシルマリルに続く様に、他の面々も張り詰めていた緊張感を緩めた。
 しかし、ティーエルだけは厳しい表情のままでトセットに声を掛ける。

「トセット。一つ、聞きたい事が有るんですが・・・・・・」
「・・・・・・はい、何ですか?」

「さっきの技・・・ダークネス・オブ・ナイト。・・・・・・本当に会得していたんですか?」
「・・・・・・」







 2日前。セージマスターの家。

「それでは・・・習得していない技を無理矢理でも一時的に習得する術が・・・・・・?」
「無い、ワケでは無いが・・・何が起こるかは判らない。技だけでは無く、自身にも・・・・・・だ」
「多少なりとも、覚悟していますわ」
「・・・・・・生半可な心では無い様だな。しかし、成功でも失敗でも・・・命に何が有っても保障出来ぬ。それでも良いか?」
「はい」

 セージマスターは本棚の裏側から、古惚けた書物を取り出した。

「禁断の書の中でも、尤も危険とされている。何度も聞くが、本当に良いのか?」









「・・・・・・と、云うワケです。成功するにはしましたが、私への負担が大き過ぎた様です・・・・・・」
「無茶過ぎるだろ・・・・・・危険だと判って、何故そんな真似したんだ!!」
 デュレスが声を強めて言う。

「それは・・・・・・」






「エナジーショック!!」

 グリフェールが水晶体に向かってエナジーショックを放った。
 命中した瞬間、水晶体に小さなヒビが入る。

「・・・エナジースピア!」

 パキィィンと水晶体の壊れる音が聞こえた瞬間、水晶体から淡い薄紫色の光が一直線にハネウタに向かって飛び込んだ。

「え・・・・・・、何とも無い・・・・・・あ・・・・・・魔力・・・・・・」

 光を受け、恐る恐る目を開いて自分の体を確認するが、外傷は無い。
 しかし、それだけでは無かった。
 ハネウタは身体の奥底で、失われたハズだった魔力を僅かに感じ取った。

「やっぱり・・・・・・この水晶体がハネウタの魔力だったんだ。だから、こうやって壊せばハネウタに魔力が戻る・・・・・・」
「っ・・・・・・お前も同属だったんだな。お前から先に・・・・・・」

 ジオストラがジェディの横を駆け、グリフェールに向かってホーリーライトの詠唱を始めた時だった。


 ガクンと右腕の動きが止まった。
 否、止められた。

「勝手に相手を変えるんじゃねぇ。お前の相手は俺だろ?」

 振り返ると、ジェディの鞭がジオストラの腕に絡まっていた。


「グリ。なるべく早目に片付けてくれ・・・・・・よ!!」

 最後の一言と同時に鞭を引き戻すと、その勢いでジオストラの身体が壁に衝突。
 重い音が響いた。



 判った事。
 単に叩いただけでは水晶体は壊れない。
 水晶体の表面はバリアで覆わている。
 それに込められた同属性の魔法で解除させなければ、他の物理的攻撃は効かない。
 バリアは自律回復するので、その度に逐一解除しないといけない。
 つまり、ハネウタと同じ魔力を持つグリフェールにしか出来ない事だった。
 傷を付けた程度では意味が無いので、スペルユーザーとしての魔法攻撃力は勿論だったが、それ以上に詠唱速度が必要とされる。

「詠唱速度、もっと訓練しておいた方が良かったかなぁ・・・・・・」

 苦笑を浮かべながらマジックキャンディーを噛み砕いた。
「グリフェール・・・ジェディ・・・・・・」


 ハネウタは不安そうな様子で2人に声を掛けるが、2人は笑っていた。



「「大丈夫」」





  • 最終更新:2010-11-27 15:14:54

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