刻限アンサンブル[8]

「何か、ビンゴって感じだよ」
「そうだな。いかにも!・・・って雰囲気じゃねぇか」








Vol.8
A promise with you






 グリフェールがノブに手を掛け、前に体重を掛けながらドアを開けると、自然に出来た水晶に手を加えずに利用したオブジェの様な物が目に付いた。
 水晶体からは薄っすらとした淡い発光が見えており、まるで幻想的な光景だった。

 そして、その水晶体に身体を預けている薄紫色が目に入った。

「・・・・・・グリフェール、ジェディ・・・・・・?お前ら・・・何、で・・・・・・?」

 繋がれた右手首に巻かれている鎖を気にしながら、驚いた様子で2人を見遣る。
 2人がハネウタの元に駆け寄った。

「少し・・・・・・顔色が悪そうだね。また具合でも悪いのかい?・・・・・・いや、それとも別の理由で?」

 ハネウタと共に狩りをしているグリフェールは、逸早くハネウタの異変に気付いた。
 共闘を始めた頃、ハネウタが虚弱体質だと云う事を知ったのだが、今のハネウタは明らかに虚弱体質から来る異変では無い様に見えたのだ。

「・・・・・・トセットの方も気になるし、早くこんな所から退散しようぜ」

 ジェディはスペア武器として常備しているハンティングナイフを手に取り、ハネウタの右手首に巻かれている鎖に手を伸ばした時だった。

「・・・・・・だめ・・・・・・っ」

 ハネウタがジェディの手を払い除け様としたが、リングから痛みを伴う刺激が手に伝わった。

「痛・・・っ・・・・・・」

 ジェディが慌てて手を引き戻すと、摩擦熱の様な感覚が手に残った。

「あ・・・・・・」

 その一連の様子を見たハネウタは呆然とした表情を見せたが、少し俯いてから何かを決意した様に顔を上げた。


「これ・・・・・・昔、記憶を失くす前の「あたし」が作った物らしいんだ・・・・・・あたしはそんな事は覚えていないけど・・・・・・、これはあたしの問題だ。姉さん達も、お前らも・・・・・・もう・・・・・・これ以上あたしに関わるな!!」


 今にも泣きそうな様子で声を荒げて言う。
 ハネウタらしくない言動に驚きを隠せなかった。



 2人に、自分に欠けていた過去の記憶を語り始めた。
 『マルカート』としての自分の事。
 ポルティエから逃走した事と、その因縁。
 自分が知った範囲の事を全て話した。


「・・・・・・成程。つまり、マル・・・・・・じゃなくて、ハネウタを知った奴等が起こした事だったと云うワケだった・・・と」
 ハネウタから事情を掻い摘んで聞いた所で、一連の騒動をグリフェールが簡単に纏める。

「じゃあ、どうやってコレを外す事が・・・・・・」

 ハネウタの右手首に巻かれているリングと鎖を見る。

「本当に知らないんだ。本当に、あたしがコレを作ったのかも信じられない。もう、どうしたらイイのか・・・・・・」

 無理矢理外そうとすればリングが防衛反応を起こすので、迂闊に手を出せない。
 繋がっている鎖を外したとしても、リングをどうにかしないと全ての問題が解決しない。

「外そうとしたけど・・・全然、ダメだったからな」

 首を横に振って、目を伏せた。


「・・・・・・ん?」


 ふと、ジェディがハネウタの不自然な様子に首を傾げ、ハネウタの前に座り込んだ。

「ハネウタ。・・・・・・左手、見せろ」

 ハネウタは僅かに肩をピクリと動かしたが、ジェディの視線を逸らしながら左半身を庇う様に壁に身体を預ける。

「おい・・・・・・」
「うるさい。お前には関係無い」

 一触即発になりそうな2人をハラハラしながら見守るのが精一杯のグリフェール。
 しかし、先に痺れを切らしたのはジェディの方だった。


「あー・・・面倒だ、見せろって言ってるだろ!」


 ハネウタの態度が癇に障ったのだろうか、左腕を強引に掴んで引っ張り出した。


「・・・・・・っ!」
「あ・・・・・・」


 ジェディが掴んだハネウタの左手。
 左掌から鮮血が流れ出ている。
 力無くぶら下がっているだけの左手を紅く染めていた。



「お前・・・・・・無理矢理、外そうとしてたのか」
「・・・・・・別に・・・・・・」



 2人が来る少し前。
 何とかしてリングを外そうとしていたが、引き千切ろうと手に力を加えれば加えるほど、リングの防衛反応が働いて掴んだ左手が悪戯の様に傷付けられていた。

 どれぐらい耐えたのか判らなくなっていた。
 気付いた頃には左手が真っ赤に染まり、痛みに気付けなくなるまで左手を自分の力で動かせない程まで痛めていた。

「う・・・・・・っ」

 後ろめたい気持ちになり、ハネウタの金色の瞳がジワリと熱くなった。

「あ・・・・・・あたしが勝手にやった事だもん、口出しされる覚えは無い!判ったなら帰れ!トセ姉さんとフォン姉さんを連れて、さっさと帰れ!」

 駄々をこねる子供の様に癇癪を起こし、2人に当たり散らす。

「ハネウタの言う通りにしたいのは山々だけど・・・・・・ハネウタを助けてあげて。って、トセットから言われてるんだよ」
「だから、お前の言う事は聞かねぇよ。トセットの言う事は絶対・・・・・・だろ?」
「・・・・・・ぅ・・・・・・」
 返す言葉が見付からず、口篭るだけ。

 ジェディの横で、グリフェールが妙に落ち着かない様子で周囲を見回していた。
「ちょっと・・・聞いてイイかな?・・・・・・ハネウタの魔力は、本当に残って無いの?」
 その質問に「?」を浮かべるが、
「あぁ。コレが原因で魔法そのものが撃てなくなってるし、魔法自体を受け付ける事が出来ないんだ」
「・・・・・・あのさ、コレ。飲んで貰えないかな?」

 その回答に少し考え込んだ様子を見せたが、ポケットからマジックドリンクを取り出す。

「・・・別に構わないけど・・・・・・あまり意味は無いと思う」
 その根拠として、ハネウタの足元にはマジックキャンディーの包み紙とマジックポーションの空き瓶が転がっていた。
 グリフェールが何をしたいのか判らなかったが、言われるままにマジックドリンクを飲み干す。

「・・・・・・」

 グリフェールは黙って意識を集中させている。


「・・・・・・成程。そういう事だったんだ・・・・・・」


 何かに気付き、行動に移そうとした時だった。




「無茶しないでもらいたい」


 何所からか、男の声が聞こえて来た。

「・・・マジックバリア!!」
「ホーリーライト!」

 グリフェールがマジックバリアを放った。
 魔法が完全に遮断されるワケでは無いので、大きな被害を抑える事が出来たのだが、咄嗟に2人の盾と成ったジェディは左腕を押さえながら2人を振り返る。

「ジェディ!!」
「痛ぇ~・・・・・・グリ、ナイスアシスト」

 そう言い、声の主・ジオストラと向き合った。

「ハネウタ。この男と知り合いか?」
「知り合いじゃない・・・・・・倒すべき敵って事を思い出せた」
「余計な記憶だな・・・・・・その男共は仲間か?」

 そう言い、武器をタイタニアロッドからルビーメイスに持ち替えた。

「あぁ、そうだ。ジェディさんと愉快な中間達だ」
「・・・愉快ってのは余計だよ」

 緊張感を感じられないジェディのセリフに、グリフェールが呆れた様なツッコミを入れる。

「ハネウタ、グリ。あの男は俺に任せてもらえないか?ブッ飛ばせばイイだけらしいからな」



 鞭で床を一つ打ち鳴らしながら笑うと、ジオストラと対峙する。





  • 最終更新:2010-11-27 15:13:45

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