刻限アンサンブル[7]

 床に這い蹲る様に倒れたままのトセットは、自力で立つ事すら侭なら無い状態だった。

「うわ、酷い怪我・・・・・・ティーエル、早く!」
 ティーエルはシルマリルに腕を引かれながらトセットの前に座る。

「・・・・・・無茶しましたね、今直ぐ治します。・・・ヒーリング」

 温かい光がトセットの身体を覆うと、身体のあちこちの痛みが消え去り、傷口も綺麗に塞がった。
「あ・・・・・・」
 ゆっくりと身体を起こしながら、痛みが大きかった部位へ手を触れた。

「続けます。ホーリーフェザー」

 光の旋回と同時に舞った羽に包まれると、身体の奥底から尽き果てた力と魔力が湧き上がって来る感覚を覚えた。

「貸しですよ」
「はい!有り難う御座います」
「トセット、立てる?」
 グリフェールが手を差し出す。トセットはグリフェールの手を借りて立ち上がった。


「うっ・・・・・・」


 立場逆転と成ったり、追い詰められたラタフィアは、鉱石を再び翳してモンスターを召還させる。


「またですか・・・・・・進歩が有りませんわね」

 ラタフィアを左右色の違う瞳で睨み、聖槍を握る手に力を籠める。

「トセたん、アタシ達はどうすればイイの?」

 シルマリルの声にハッと我に返る。

「ハネウタが、この建物の何所かに居るハズなんです!私は此の方と決を付けなければいけないので、私の代わりに・・・・・・ハネウタと、地下に居るフォンを助けて下さい!!」


 4人に向かって叫ぶと、聖槍を持ち直して詠唱を始める。

「ダークウェポン!!」

 トセットの身体が再び、紫黒色の魔法陣で包まれた。


「シロフォンの方は大丈夫。3人を向かわせたからね」
「ティーエル。お前は此処に残ってトセットの援護。俺はハネウタを探しに行く」
「・・・・・・怪我しないで下さいよ」
「シルマ、此処は頼むよ」
「うん、任せて!ハネちゃんを助けてあげてねっ」



「・・・・・・マルカートは渡さない!!」

 ロボのアームがトセットに向かって振り翳されたが、火花を散らせながら盾でガードする。
 体力が全快したので先程とは違い、攻撃を受けても堪える事が出来る。

「それは・・・・・・私のセリフです!!」

 トセットの言葉が合図だった様に、全員が武器を持って飛び出した。












Vol.7
It is here








 行く手を作る様にシルマリルが逸早く飛び出し、前に居たアラウネにチャクラムを投げて動きを停めた。
 それに続いて、ティーエルがターンアンデッドを放つと、屈強なアベンジャーの身体が地に堕ちる。
 迫って来たアイスドールの群れはシルマリルの仕掛けたスリップトラップに捕まり、群れは地べたを転がり回る。

 2人が拓いた進路を、ジェディとグリフェールが駆けて行く姿を横目で見ると、口の中で小さく呟いた。


「お願いします・・・・・・!!」










「なななな、何で皆が居るの?」

 リールーに肩を借りながらシロフォンは床に預けた身体を起こした。

「うーん、細かい話は後でね。ココは荒れるだろうから・・・リールー、シロフォンを憑依させて上に避難してて」

 カーディナルが小さく微笑みながら、リールーとシロフォンに言う。

「・・・カー君。向こうにある、あの飾りみたいな水晶?あれを完全に壊さないと永遠にモンスターが召還されるらしいんだ・・・・・・だから・・・・・・」

 シロフォンの言葉を最後まで聞く前に頷いて事を察した。

「大丈夫っ。りるに憑依して~アクセサリーが安全~」
「う、うん・・・・・・」

 少し離れた所でモンスターの群れと戦闘中のデュレスを見ながら、リールーのペンダントに憑依を始めた。

「それじゃリールー、頼むよ」
「はぁーい。任せてね~」

 同時に、リールーへの憑依を完了させた。

「皆、頑張ってね~。シロおねーさん、行くよー!」

 リールーは羽根を広げて、最初に自分達が居た部屋へと向かって飛び立った。



「はーい、到着ぅ~。もう出ても大丈夫~」

 リールーに言われ、ペンダントの中から外に出て来た。

「ありがと、リル」
「えへへ。どういたしましてっ!」

 既に誰も居ない部屋と化していた場所で、ジオストラ・ラタフィア達との遣り取りを思い出した。



「超楽勝」
「ただいま。リールー、シロフォン」
「おかえりなさ~い。首尾は?」
「全然オッケー。シロフォンの言った通り、水晶体を粉微塵まで破壊したらモンスターの増殖が止まったよ」

 それを聞くと、リールーはホッと胸を撫で下ろした。

「あ、ありがと。でも・・・なんでボクらがココに居るって判ったの?」
「何でも屋に聞いた」
「それに、3人揃って最近様子が変だったから、それが妙に気になってたんだ」
「最初に気付いたのは、兄貴なんだけどな。「大人しいのはハネウタらしくねぇ」って・・・・・・何を言ってるのか判らなかったけどな」
「ハネちゃんだから、有り得るかも・・・・・・」
と、妙に納得してしまうシロフォン。

 ハネウタが聞いていたら確実に怒られてしまいそうな言い分である。

 カーディナル・デュレス、そしてリールーは互いにアイコンタクトで何かを言おうとしていたが、視線がデュレスに集まっていたので代表してデュレスが切り出した。

「何でも屋に聞いたし、様子が妙だったからココまで辿り着いたのも有るんだけど・・・・・・ちょっと謝っておく事が有るんだ」
「謝る?ボクに?」

と、シロフォンは頭に「?」マークを浮かべて首を傾げた。


「実は、カー君のケーキを取りに行った日、お前の会話を聞いてたんだ」
「会話って、ボクの・・・・・・、・・・・・・!?」

 数日前の遣り取りを思い出した。

「皆、シロおねーさんの事が大好きだよ?料理を作って、お洋服を作って、花を咲かせてくれたり~。それから~。りるのマシュマロ作ってくれるシロおねーさんも好き~」
「・・・・・・まぁ、リールーの言う事は尤もだ。マシュマロ強請るリールーが必ず居て、激甘ケーキを注文する僕も来る」
「罰ゲームで料理作ってくれと頼む兄貴も来る。他の皆も何らかの理由を付けて来てるだろ?当たり前の様に全員を笑って受け容れるお前が皆の中心に居る。いつも変わらず、だろ?それだけで充分だぜ」

 そう言い、シロフォンの頭をポンポンと叩いた。


 自分達の共存意味すらを否定され、誰かを助けるには小さくて無力。
 自信を持って誇れる事は『創り手』の技術。
 それが何の役に立つのかと自信を喪失したのも事実だった。

「・・・・・・ぅ・・・・・・」


 俯いたシロフォンが小さく漏らした声に、3人は首を傾げる。



「っ・・・・・・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁん!!!」


 シロフォンは何かが壊れた様に、大声を上げて泣き出した。
 リールーが慌ててポケットを探り、ハンカチを出してシロフォンの顔を拭くが、ハンカチ1枚では間に合わなさそうだ。

 カーディナルとデュレスは困った様に。しかし、晴れやかな様子で笑って2人を見守っていた。



 ――――――ボクは、皆と一緒に居てもイイんだよね・・・・・・?




  • 最終更新:2010-11-27 15:12:11

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