刻限アンサンブル[12]


「あの時は不意を突かれたけど・・・あの時のあたしと一緒だと思うな!」
 そう言い、魔法詠唱を始めた。







Vol.12
Vigorous attack trio






「エナジーフリーク!!」
「リフレク・・・」

 ハネウタのエナジーフリークが僅かに速かった。
 ペナンスは沈黙と石化を同時に受け、身動きを奪われた。

「トセ姉さん!!!」

 ハネウタの背後から、トセットが飛び出していた。
 2人はペナンスを中心に左右に分かれながら羽根を広げて低空で浮くと、トセットは右側・ハネウタは左側に付く。

「ライトニングスピア!!」
「エナジースピア!!」

 同時に放たれた2つの槍が、ペナンスの身体を両側から貫いた。
「・・・・・・ぐ、ぁ・・・・・・」
 
 その光景は、罪人を裁く姿にも似ていた。
 

「ペナンス!!・・・・・・このぉ・・・!!」

 DEMが2人に向かって駆け出した。

「行かせないよ・・・・・・パペット!!」

 DEMの一撃を軽く喰らいながらも、シロフォンの両手から。否、指先から淡い光が飛び出すと同時にDEMの身体に光が纏われ、DEMの動きを奪う。

「しまった・・・コレは一体・・・・・・?」
「姉さん、7秒だけ時間を取ってくれ!!」
「任せてっ!!」

 ハネウタはシロフォンの声に頷き、魔法詠唱を始めた。
 シロフォンは呼吸をも忘れ、ハネウタの詠唱が終わるまでの7秒を耐える。

「フォン姉さん、離れて!!」

 シロフォンはパペットで動きを封じさせたまま横に移動する。
 そして、ハネウタがDEMに向かって手を翳した。

「レイビングソード!!」

 ダンシングソードを上回る無数の魔法の剣が、DEMを四方から斬り付けた。
 DEMは耳を劈く独特のキカイ音を響かせながらも、ハネウタに向かって近付いて来た。

 しかし、そのハネウタの前にシロフォンが飛び出す。
 咄嗟にソリッドオーラを放って援護に回った。

 シロフォンの手からチリッとした火の粉が舞うと、DEM目掛けて投げ付けた。
 それに重なる様に、ハネウタが再び詠唱を始めた。

「ダスト・・・エクスプロージョン!」
「レイビングソード!!」

 シロフォンのフォローを受け、止めの一撃でDEMを完全に撃破した。



「散れ・・・・・・カオスウィドゥ!!」
「つっ・・・・・・ヒーリング」

 ペナンスの放ったカオスウィドゥがトセットの脇腹を掠めた。
 一瞬だけ眉を歪めて苦悶の表情を見せるが、本家ドルイドに劣るヒーリングで傷を塞ぐ。
 臆する事も無くスピアディレイキャンセルを繰り出しながら、ペナンスへの攻撃の手を緩めない。
 ペナンスは後方に一度退いたが、直ぐに体勢を整えるとトセットに向かって腕を突き出す。

 それは「腕」と謂うには程遠く、カタチを持たない黒い霧。
 咄嗟に盾でガードをしたので直接的な衝撃は緩和したが、左腕に軽い痺れを受けた。

 間近に、ペナンスの顔が在った。
 
 雪よりも白い、白磁の肌。
 美しくも妖しく輝く、金色の瞳。
 鮮血より鮮やかな、猩々緋の唇。
 幼い表情から想像が出来ない、禍々しくも奇麗な笑顔。

 背筋が凍り付く様な威圧感に、ゾクリと鳥肌が立つ。 


「貴方が腕の立つ者でも・・・所詮、神の力には敵わないでしょう・・・・・・?」
「神・・・・・・だ、と・・・・・・?」


 聖槍。
 神殺しに用いられたとされる銀の槍。
 神の血に触れた事で、聖なる力が宿ったとの謂われが有る。


「天使の私も、神に敵うとは思っていませんが」



 足元に強力な魔力の気配を感じたので周囲を見回すと、ハネウタが自分に向けて魔法陣を張り巡らせていた。

「・・・・・・あの時の魔法で、お前を地獄に連れて行く」

「チャージストライク!!!」
「ルミナリィノヴァ!!」
「マリオネット召還ホムラ、バックドラフト!!!・・・ファランクス!!!」

 三重奏に当てられたペナンスは断末魔の悲鳴を上げたが、トセットとシロフォンの間から最期の足掻きの様に、鋭い腕をハネウタに向けて伸ばした。

 ハネウタは詠唱を終えて息を整えている最中だったので、ペナンスから向けられた魔手に気付くのが遅かった。
「ソリッ・・・・・・」
 咄嗟にソリッドオーラで防御しようと詠唱を始めたが、ペナンスの動きの方が速かった。

(やばい、避けられない・・・・・・)






「・・・・・・え?」


 ハネウタの視界が、数人の背中で埋まった。

「無茶しやがる・・・・・・」
「危ないって」
「ぎ。ギリギリ、ギリ・・・・・・だったよ~」
「だ、大丈夫・・・・・・だね?」
「無傷だな?」
「・・・・・・ですね」
「あ、あはは・・・皆も大丈夫だよね?」
 
 戦闘を見守っていた仲間達が、ペナンスの魔手から間一髪でハネウタを護っていた。

 シルマリルとリールーとティーエルが3人掛かりでハネウタを抱え込んで、デュレスが盾でペナンスの攻撃を受け止めている。
 カーディナルとジェディが武器を構えてペナンスと対峙して、グリフェールがソリッドオーラで援護していた。

「お前ら・・・・・・何で・・・・・・?」

 呆然としながらも、両側から抱えられたシルマリルとリールーの体温を感じながら、護ってくれた全員に問い掛ける。

「何でって・・・思わず飛び出しちゃった」
「手助け要らねーって言われたけど・・・・・・俺らの力も使ってもらいたいって所だな。うん、そうだ」
「後ろを護っておいたけど、前も護っておかなきゃいけないの~」

 グリフェール・ジェディ・リールーが順に答えると、他の仲間も同じ様に頷く。

「・・・・・・あ、・・・・・・ありが・・・・・・と」


「ハネちゃん・・・・・・負けちゃダメっ!!」

 リールーからポンと背中を押され、ペナンスと再び対峙した。
 ティーエルとリールーが、ヒーリングとラウズメンタルでハネウタを援護する。
 胸の奥から湧き出る熱い何かが全身に伝わった。


「負けない」


 スゥ・・・・・・と深呼吸を一つ。

 カッ!と目を見開き、エイボンを構えて何事かを詠唱すると、そのエイボンから巨大なエネルギーの波動が起きた。


「竜眼解放ッ!!」


 エイボンが真の力を解放した事により、誰も感じた事の無い超強大なエネルギーが巻き上がり、先程放ったレイビングソードより巨大に光り輝く魔力の剣が浮かんだ。

「レイビングソード!!」

 ハネウタが放ったレイビングソードは、ペナンスの四肢に向けて躊躇せずに放たれた。

「エナジーフリーク・・・・・・・・・ラストインクエスト!!」

 迷いも躊躇も無く、反撃の隙さえ与える事が赦されない魔法連撃。
 ペナンスは狂った様に身体を揺らし、奇麗な顔を醜く歪ませる。

「ぐあああ・・・・・・っ、マ・・・マルカートォォォォォ!!!!」
「お前は、此の世からも彼の世からも、消え失せろ!・・・・・・ルミナリィノヴァ!!!」


 周囲に巨大な魔法陣が張り巡らされ、その魔法陣に向けて巨大なマジックボールが空からペナンスに向かって落とされると、そのまま爆発を起こす。

 ペナンスは悲鳴なのか何なのか判らない声を残し、煙となって掻き消えた。



 静寂。




「・・・・・・終わった・・・・・・」


 そう言い、後ろで待機していた全員を見た――――――瞬間、


 身体が宙に浮いた様な感覚。
 スローモーションの様に、床に向かって倒れて行った。


『・・・・・・限界だな』

 マルカートが倒れたハネウタの影から飛び出して来ると、ハネウタの身体を支えながら床に座る。

「え?でも、先程ハネウタとマルカートが元の姿に戻ったのでは・・・?」
 トセットがマルカートの横に屈むと、シロフォンもその横に座る。

『そうだけど・・・あの水晶を壊した時に、ハネウタの魔力が急激に戻っただろう?あの魔力回帰の衝撃で「魔力と記憶」を無理矢理起こしただけだから、一時的なものだったんだ』
「成程・・・・・・魔法を使い過ぎたから、今は限界・・・って事?」
『そう。でも、今回の件で記憶だけは取り戻したけれど・・・・・・魔力を全部思い出すには・・・まだ時間が掛かりそうだ』


 マルカートとハネウタの周りに、全員が集まっていた。


『ハネウタが本来の魔力を取り戻すまで、あたしは休眠状態に入る。身体と記憶整理の調整が必要だから、3日ぐらい眠らせておく・・・次に目を覚ました時、此処に来た時と同じ魔力に戻っているハズだ』

 そう言い、目を閉じて深呼吸をした。



 唄ヲ忘レル天使ノ言葉 
 輝ク欠片ヲ拾イ上ゲ 
 声高ラカニ謳イナサイ 
 声ガ嗄レテモ 
 詩ハ枯レナイ 
 天高ラカニ 
 響ク羽根ノ音




 『歌』を謳うと、聴くのが初めてだったトセットとシロフォン以外の全員は、短い歌に耳を傾ける。

 マルカートの身体が薄らと揺らぎ、ジワジワとその姿がハネウタの影に吸い込まれて行く。

『それから・・・・・・起きた時にハネウタが言う確証が無いと思うから、あたしが代わりに言う』

 苦笑を浮かべるが、意を決した様に顔を上げた。












『あたしを知ってくれて・・・・・・ありがとう』






 目を細めて微笑むと、その姿はハネウタの影の中に溶け込んで行く。
 数秒後には、完全にハネウタの影と同化した。








  • 最終更新:2010-11-27 15:19:53

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード